つばめゆ｜藤沢／グッドワイフ

つばめ湯に行ってきた。
上野の一角に、こんな静かな場所があったんだと思うほど、落ち着いた佇まい。
登録有形文化財にも指定されている銭湯で、外観からすでに特別な空気が漂っていた。

初めての場所で少し迷いながら到着し、
外観に見とれて間違えて男湯に入ろうとした私に、
常連のおじいちゃんが「こっちが男湯だよ」と穏やかに声をかけてくれた。

扉を開けようとすると驚くほど重くて、一瞬戸惑う。
まるで“選ばれた人だけが通れる扉”みたいな感覚。
ところがその重さをものともせず、常連のおばあちゃんたちは、
長年の所作が染みついたような自然な身のこなしでスッと扉を開けて入っていく。
その姿が、本当に“選ばれし者たち”のように見えた。

中はコンパクトで昔ながら。人も少なく、土曜の午後とは思えないほど静かで、ゆったりと過ごせた。
普通のお湯と、深めでボコボコする浴槽があって、
思った以上に深くて「わっ！」と声が出てしまい、ちょっと恥ずかしかった。
すぐそばにいた上品なマダムが「大丈夫？」と優しく声をかけてくれたのも印象的だった。

脱衣所とドライヤーの場所が別になっていて、3分20円のレトロなドライヤーに10円玉を落とす音がまた趣深い。
そして館内のあちこちに “隠れつば九郎” が飾られていて、今年亡くなったと聞いても、まだそこに息づいているようでうれしいくなった。

初めてのツバメ湯は、静かで、利便性よりも味わいが勝っていて、どこか品があって、
“文化財の銭湯”という言葉がしっくりくる場所だった。

　
 

藤沢🌙